A さん(31 歳、 1 回経産婦)は既往歴に特記すべきことはない。
妊娠経過は順調であった。
妊娠 38 週 6 日に陣痛発来し、 2 時に入院した。
分娩第 2 期遷延のためオキシトシンを用いて陣痛を促進し、23 時に 2,980 g の男児を出産した。
Apgar〈アプガー〉スコアは 1 分後、 5 分後ともに 9 点であった。
分娩所要時間 22 時間、分娩時出血量 450 mL、会陰裂傷Ⅱ度、分娩後 2 時間の母児の経過は良好であった。
A さんの乳房はⅢ型で、短乳頭である。
第 1 子は混合栄養であったため、今回は母乳栄養を希望している。
産褥 3 日、乳房は全体的に温かく乳房緊満軽度あり、乳腺の開口数 3 〜 4 本、乳輪部の圧迫で乳汁がにじむ。
左乳頭に水疱がある。
たて抱きで授乳しており、児頭の支えが不安定になっている。
A さんは「おっぱいが張って痛いし、赤ちゃんもうまく吸ってくれません」と話す。
体温 37.2 ℃、脈拍 78/分。
子宮収縮は良好である。
このときの A さんへの対応で適切なのはどれか。
正答3
解説
正解は3です。
Aさんの乳房はⅢ型(大きく下垂ぎみの乳房)で、短乳頭です。
産褥3日で乳房緊満があり、左乳頭に水疱ができていることから、児の吸着が浅いと考えられます。
たて抱きで児頭の支えが不安定になっていることが、うまく吸えない原因になっています。
【選択肢別解説】
1:× 乳頭の水疱は吸着の改善で治癒が期待でき、直接授乳を中止する必要はありません。
中止すると乳汁の分泌が減り、乳房緊満も悪化します。
2:× 乳房全体を冷やすと乳汁の分泌が抑えられてしまいます。
冷罨法は、痛みや熱感の強い部分に限って行います。
3:○ 脇抱き(フットボール抱き)は、児の体を母親の脇に抱え、手で児頭をしっかり支えられる抱き方です。
大きな乳房でも乳頭と児の口の位置を合わせやすく、深い吸着を得やすくなります。
乳頭にかかる圧迫の位置も変わるため、水疱の悪化を防ぐことにもつながります。
4:× 乳房緊満がなくなるまで搾乳すると、乳汁の産生がさらに促されて緊満が強くなります。
搾乳は乳輪部を柔らかくして吸着しやすくする程度にとどめます。
【ポイント】
乳頭トラブルの多くは浅い吸着が原因です。
抱き方を変えて深く吸着させることが、乳頭の傷と乳房緊満の両方への対策になります。