A さん(38 歳、初産婦)は妊娠 40 週3日。
胎児心拍数陣痛図で変動一過性徐脈を認め、吸引分娩で3,800 gの男児を出生した。
出生直後の児は、啼泣がなく、筋緊張は低下し、羊水混濁は認めなかった。
直ちに蘇生を行った。
バッグ・マスク換気による人工呼吸を継続していたところ、上腹部の腹部膨満を認めたため、胃管を挿入することとした。
児は生後5分で自発呼吸が出現したが、呻吟、多呼吸、中心性チアノーゼを認めた。
保育器内酸素 30 % を使用し、NICU に入院した。
児の Apgar〈アプガー〉 スコアは1分後2点、5分後7点であった。
生後1時間の児のバイタルサインは、体温 37.0 ℃、呼吸数 80/分、心拍数 150/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉 98 %。
血液ガス分析(room air)は、pH 7.30、PCO2 42.0 mmHg、HCO3⁻ 20 mEq/L である。
児の胸部エックス線(別冊No. 1)を別に示す。
考えられる病態はどれか。
正答1
解説
正解は1です。
蘇生でバッグ・マスク換気を受けた児が、呻吟、多呼吸、中心性チアノーゼを示しています。
胸部エックス線写真で、肺の中に空気がない部分があるかを読み取ります。
【選択肢別解説】
1:○ 写真では、児の右胸腔(向かって左側)が反対側より明らかに黒く抜け、肺血管の影が末梢まで見えません。
胸腔内に空気がたまり、肺がしぼんでいる気胸の所見です。
陽圧換気は気胸の原因となり、多呼吸や呻吟、チアノーゼとも一致します。
2:× 呼吸窮迫症候群(RDS)は肺サーファクタントの不足による病気で、主に早産児に起こります。
エックス線では両側の肺がすりガラス状に白くなり、気管支透亮像がみられます。
妊娠40週の児で片側だけ黒く抜ける本例とは異なります。
3:× 新生児一過性多呼吸は肺水の吸収の遅れによるもので、帝王切開で生まれた児に多くみられます。
エックス線では肺門部の線状影や葉間の胸水がみられ、片側の肺の虚脱はありません。
4:× 新生児遷延性肺高血圧症では、酸素を投与しても低酸素血症が改善しにくいのが特徴です。
本例は酸素30%でSpO2が98%に保たれており、エックス線でも片側の空気貯留を説明できません。
【ポイント】
蘇生後に呼吸状態が悪化したら、陽圧換気による気胸(エアリーク)を疑います。
緊張性気胸では縦隔が反対側に押され、循環が悪くなるため、緊急の脱気が必要になります。