AがBに対して賃貸住宅(以下、「甲住宅」という。)を賃貸し、Bが居住している場合に関する以下の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Bの承諾がなくとも売却することはできる。
イ Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Aは、Bの承諾がなければ、AC間の合意で賃貸人の地位を移転させることはできない。
ウ Aが融資を受けて甲住宅を建築し、同建物及び敷地に、借入金を被担保債権とする抵当権が設定され、登記されている場合において、抵当権が実行され、Cが甲住宅を買受けた場合、抵当権設定登記後に甲住宅に入居したBはCの買受時から3か月以内に甲住宅を明渡す必要がある。
エ BがAの同意を得て、賃借権をDに譲渡した場合、敷金に関するBの権利義務関係はDに承継される。
正答1
解説
正解は1です。
賃貸住宅の売却、賃貸人の地位の移転、抵当権実行時の明渡猶予、賃借権譲渡時の敷金を問う問題です。
ア〜エの○×は記述そのものの正誤を示し、正しい記述(○)の数を数えます。
【記述別解説】
ア:○ 所有者は、賃借人の承諾がなくても、賃貸中の建物を第三者に売却できます。
Bは引渡しを受けて居住しているので、新しい所有者にも賃借権を対抗できます(借地借家法31条)。
イ:× 賃貸人たる地位は、賃借人の承諾がなくても、譲渡人と譲受人の合意で移転できます(民法605条の3)。
さらに、対抗要件を備えた賃貸借では、売却により賃貸人たる地位は当然に譲受人へ移転します(民法605条の2第1項)。
Bの承諾が必要とする点が誤りです。
ウ:× 抵当権設定登記後に入居した賃借人は、抵当権者や買受人に賃借権を対抗できません。
ただし、競売の買受人の買受けの時から6か月間は、明渡しが猶予されます(民法395条1項)。
「3か月以内」とする点が誤りです。
エ:× 賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃貸人は旧賃借人Bに敷金を返還しなければなりません(民法622条の2第1項2号)。
敷金に関する権利義務は、特段の合意がない限り新賃借人Dには承継されません。
正しい記述はアの1つなので、正解は1の「1つ」です。
【ポイント】
賃貸人が交代すると敷金関係は新賃貸人に承継され、賃借人が交代すると承継されません(民法605条の2第4項、622条の2)。
抵当建物の明渡猶予は6か月で、猶予期間中も使用の対価は支払う必要があります。