建物賃貸借契約における必要費償還請求権、有益費償還請求権及び造作買取請求権に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
ア 賃貸物件に係る必要費償還請求権を排除する旨の特約は有効である。
イ 借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要もない。
ウ 借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか一方を選択して、貸主に請求することができる。
エ 借主が賃貸物件に空調設備を設置し、賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、貸主が造作の代金を支払わないときであっても、借主は賃貸物件の明渡しを拒むことができない。
正答4
解説
正解は4です。
借主が支出した費用の償還(必要費・有益費)と、造作買取請求権をめぐる明渡し拒絶の可否を問う問題です。
【記述別解説】
ア:○ 必要費償還請求権を排除する特約は有効です。
必要費の償還を定める民法608条1項は任意規定だからです。
イ:× 借主は、必要費の償還を受けるまで留置権に基づいて明渡しを拒むことができます。
しかし、留置している間の建物の使用による利益は、賃料相当額として貸主に返還しなければなりません。
「賃料相当損害金を負担する必要もない」という部分が誤りです。
ウ:× 有益費の償還額を選ぶのは借主ではなく貸主です(民法608条2項、196条2項)。
価格の増加が現存する場合に限り、貸主の選択で支出額か増加額のどちらかを償還します。
エ:○ 造作代金債権は造作に関して生じた債権であり、建物に関して生じた債権ではありません。
判例(最判昭29.1.14)は、造作代金の不払を理由に建物の明渡しを拒むことはできないとしています。
適切なものはアとエなので、正解は4です。
【ポイント】
必要費は「直ちに」、有益費は「契約終了時に貸主の選択で」償還請求できるという違いが頻出です。
必要費・有益費の債権では明渡しを拒めるが、造作代金債権では拒めないという対比も押さえましょう。