Aがその所有する甲マンションの101号室を、賃料を月額10 万円としてBに賃貸し、これを使用中のBが、Aに対し、5月分の賃料10万円の支払を怠った場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
なお、AB 間に相殺禁止の特約はないものとし、遅延利息については考慮しないものとする。
正答4
解説
肢1:敷金返還請求権は賃貸借終了かつ明渡し完了によって初めて発生する債権であり(民法622条の2第1項1号)、明渡し前の現時点では未発生のため、これを自働債権として賃料債務と相殺することはできない。 正しい。
肢2:賃借人が支出した必要費の償還請求権は支出時に直ちに発生し弁済期にあるため、相殺禁止特約がない限り賃料債務と相殺できる(民法608条1項、505条1項)。 正しい。
肢3:相殺は自働債権が弁済期にあれば足り、受働債権(自己の負う賃料債務)は弁済期未到来でも期限の利益を放棄して相殺できるため、6〜9月分を含め相殺できる(民法505条1項)。 正しい。
肢4:相殺が禁止されるのは悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする場合であり(民法509条1号)、これを自働債権として他の債務と相殺することは禁止されない。
よってBはA対する賃料債務と相殺できる。 誤り。
正解は肢4(悪意の不法行為による損害賠償債権を自働債権とする相殺は禁止されておらず、Bは相殺できるため)。