契約書の記載に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
なお、当事者間に契約書以外の合意事項はないものとする。
ア 賃貸借に関する保証契約書に保証債務の範囲として「賃貸借契約から生じる借主の債務」と記載されている場合、保証人は賃料についてのみ保証債務を負い、原状回復義務については保証債務を負わない。
イ 賃貸借契約書に賃料の支払日について記載がない場合、平成29年5月分の賃料の支払日は平成29年5月31日である。
ウ 賃貸借契約書に無断転貸を禁止する旨の記載がない場合、借主が貸主の承諾なく第三者に賃貸物件を転貸したとしても、貸主は賃貸借契約を解除することはできない。
エ 賃貸借契約書に借主の原状回復義務に関する記載がない場合であっても、賃貸物件が借主の過失により損傷したときは、貸主は借主に対して原状回復費用相当額の損害賠償を請求することができる。
正答3
解説
正解は3です。
この問題は、契約書に定めがない事項が、民法の規定や解釈によってどう扱われるかを問うものです。
【記述別解説】
ア:× 不適切です。
「賃貸借契約から生じる借主の債務」には、賃料だけでなく原状回復義務や損害賠償債務も含まれます。
保証債務は、主たる債務に従たるすべてのものを包含するからです(民法447条1項)。
イ:○ 適切です。
支払日の定めがない場合、建物の賃料は毎月末に支払うのが民法の原則です(民法614条)。
したがって平成29年5月分の賃料の支払日は、5月31日になります。
ウ:× 不適切です。
契約書に記載がなくても、借主は貸主の承諾なく転貸できません(民法612条1項)。
無断転貸があれば、背信的行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、貸主は契約を解除できます(同条2項)。
エ:○ 適切です。
借主は、善良な管理者の注意をもって建物を保管する義務を負います(民法400条)。
過失で損傷させれば、この義務の違反として、原状回復費用相当額の損害賠償責任を負います(民法415条)。
以上より、適切なものはイとエであり、組合せは3です。
【ポイント】
民法の賃料の支払時期は後払いが原則で、実務で多い前払い(翌月分を当月末に支払う)は特約によるものです。
なお、2020年4月施行の改正民法621条で、借主の原状回復義務が明文化されました。