Aは自己の所有する甲建物を事務所としてBに賃貸し(以下この問において「本件契約」という。)、その後、本件契約の期間中に甲建物の屋根に雨漏りが生じたため、CがBから甲建物の屋根の修理を請け負い、Cによる修理が完了した。
この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
正答1
解説
正解は1です。
賃借人の依頼で建物を修理した請負人が、所有者(賃貸人)に費用を請求できるかを問う問題です。
事務管理・必要費償還・先取特権・不当利得(いわゆる転用物訴権)の要件がポイントです。
【選択肢別解説】
1:○ 事務管理は、義務なく他人のために事務の管理を始めた場合に成立します(民法697条)。
Cは、Bとの請負契約上の義務を履行して修理をしたにすぎません。
そのため、CはAに対して事務管理に基づく費用の支払を求めることはできません。
2:× 雨漏りした屋根の修理費用は、賃貸人が負担すべき必要費です。
賃借人は、必要費を支出したときは、直ちに賃貸人に償還を請求できます(民法608条1項)。
契約終了時まで待つ必要があるのは有益費であり、本肢は必要費と有益費を混同しています。
3:× 不動産工事の先取特権は、工事の開始前に費用の予算額を登記しなければ効力を保存できません(民法338条1項)。
また、修理した甲建物はAの所有であり、債務者Bの不動産ではありません。
「当然に」行使できるとする点が誤りです。
4:× 判例(最判平成7年9月19日)は、所有者が賃貸借全体として対価関係なしに利益を受けた場合に限り、不当利得が成立するとしています。
修理費用をBの負担とする代わりに権利金を免除していたのであれば、Aは対価を負担しています。
そのため、Aが法律上の原因なく利益を受けたとはいえず、CはAに不当利得返還を請求できません。
【ポイント】
必要費は直ちに、有益費は契約終了時に償還請求するのが原則です。
転用物訴権は、所有者が対価なしに利益を得た場合に限って認められます。