AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している場合において、民法の規定及び判例によれば、次のアからエまでの記述のうち、Aが一方的な意思表示により甲債権と乙債権とを対当額にて相殺できないものを全て掲げたものは、次の1から4のうちどれか。
なお、いずれの債権も相殺を禁止し又は制限する旨の意思表示はされていないものとする。
ア 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした乙債権
イ 弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権
ウ 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
エ 弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権
正答4
解説
正解は4です。
相殺の要件(民法505条1項)のうち、弁済期に関する要件を問う問題です。
Aが相殺するときは、甲債権が自働債権、乙債権が受働債権になります。
自働債権は弁済期にあることが必要ですが、受働債権は期限の利益を放棄すれば弁済期前でも相殺できます。
ここでは、相殺できる記述を○、相殺できない記述を×で示します。
【記述別解説】
ア:○ 相殺できます。
弁済期の定めのない債権は債権者がいつでも請求できるので、自働債権として直ちに相殺に用いることができます。
受働債権である乙債権は、債務者Aが期限の利益を放棄しているので(民法136条2項)、相殺適状にあります。
イ:○ 相殺できます。
自働債権である甲債権は弁済期が到来しています。
受働債権である乙債権は弁済期の定めがないので、債務者Aはいつでも弁済でき、相殺に供することができます。
ウ:○ 相殺できます。
弁済期の定めのない甲債権は、自働債権として用いることができます。
受働債権である乙債権も弁済期が到来しているので、相殺適状にあります。
エ:× 相殺できません。
自働債権である甲債権の弁済期が到来していないからです。
これを相殺に用いると、Bが持つ期限の利益を一方的に奪うことになるため認められません。
相殺できないものはエだけなので、正解は4です。
【選択肢別解説】
1:× ア・イ・ウはいずれも相殺できるので誤りです。
2:× イ・ウはいずれも相殺できるので誤りです。
3:× ウは相殺できるので誤りです。
4:○ 相殺できないのはエだけなので、これが正解です。
【ポイント】
「自働債権は弁済期の到来が必要、受働債権は期限の利益を放棄すれば足りる」と覚えましょう。
弁済期の定めのない債権は、自働債権としてもすぐに相殺に使えます。