個人として事業を営むAが死亡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはいくつあるか。
なお、いずれの契約も令和3年7月1日付けで締結されたものとする。
ア AがBとの間でB所有建物の清掃に関する準委任契約を締結していた場合、Aの相続人は、Bとの間で特段の合意をしなくても、当該準委任契約に基づく清掃業務を行う義務を負う。
イ AがA所有の建物について賃借人Cとの間で賃貸借契約を締結している期間中にAが死亡した場合、Aの相続人は、Cに賃貸借契約を継続するか否かを相当の期間を定めて催告し、期間内に返答がなければ賃貸借契約をAの死亡を理由に解除することができる。
ウ AがA所有の土地について買主Dとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。
エ AがE所有の建物について貸主Eとの間で使用貸借契約を締結していた場合、Aの相続人は、Eとの間で特段の合意をしなくても、当該使用貸借契約の借主の地位を相続して当該建物を使用することができる。
正答4
解説
正解は4です。
当事者の死亡が契約にどう影響するかを問う問題です。
この問題は誤っている記述の数を答えます。
委任と使用貸借は人的信頼関係に基づくため死亡で終了しますが、賃貸借や売買は相続人に承継されます。
【記述別解説】
ア:× 委任は受任者の死亡によって終了します(民法653条1号)。
この規定は準委任にも準用されます(民法656条)。
したがって相続人は清掃業務を行う義務を承継しません。
イ:× 賃貸人の死亡は賃貸借契約の終了事由ではありません。
相続人が賃貸人の地位を承継し(民法896条)、死亡を理由に解除する権利もありません。
ウ:× 売主が死亡しても、相続人が売主の地位を承継するので履行は不能になりません。
また、契約時点で履行が不能であっても、契約は当然に無効とはなりません(民法412条の2第2項)。
エ:× 使用貸借は借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。
相続人は借主の地位を相続せず、特段の合意がなければ建物を使用できません。
ア〜エはいずれも誤りなので、誤っているものは四つです。
よって正解は4です。
【ポイント】
死亡で終了するのは、委任(委任者・受任者の双方)と使用貸借(借主のみ)です。
貸主の死亡では使用貸借は終了しない点も、あわせて覚えておきましょう。