被保佐人が所有するマンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号に規定するものをいう。以下同じ。)の一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)の売却に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものの組み合わせはどれか。
ア被保佐人が保佐人の同意を得ることなく甲を売却した場合、当該売買契約を取り消すことができる者は、被保佐人に限られている。
イ保佐人の請求により、家庭裁判所が被保佐人のために甲の売却について当該保佐人に代理権を付与する旨の審判をするには、被保佐人の同意がなければならない。
ウ被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく甲を売却した場合、相手方が被保佐人に対し、1箇月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたときは、相手方がその期間内に追認を得た旨の通知を受けなくても、その行為を保佐人が追認したものとみなされる。
エ被保佐人が甲を売却する際に、自らが行為能力者であることを信じさせるため、被保佐人であることを黙秘していたことが、他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められる場合には、被保佐人はその行為を取り消すことができない。
正答1
解説
正解は1(ア・ウ)。
被保佐人の行為の取消権者、保佐人への代理権付与の要件、相手方の催告に対する効果、制限行為能力者の詐術の4点を問う問題です。
【選択肢別解説】
ア:× 取消権者は「被保佐人に限られ」ません。
民法120条1項により、制限行為能力者本人のほか、その代理人・承継人・同意をすることができる者(保佐人)も取り消すことができます。
イ:○ 本人以外の者の請求によって保佐人に代理権を付与する審判をするには、本人(被保佐人)の同意が必要です(民法876条の4第2項)。
ウ:× 被保佐人本人に対して「保佐人の追認を得るべき旨」を催告し、期間内に追認を得た旨の通知が発せられないときは、追認ではなく「取り消したものとみなす」とされています(民法20条4項)。
保佐人本人に催告して確答がない場合に追認擬制となる(同条2項)のと区別が必要です。
エ:○ 単に制限行為能力者であることを黙秘していただけでは詐術に当たりませんが、他の言動などと相まって相手方を誤信させ、又は誤信を強めた場合は「詐術」に当たり、取り消すことができなくなります(民法21条、最判昭44.2.13)。
よって誤りはア・ウで、正解は1です。
【ポイント】
催告の相手が「被保佐人本人(追認を得るべき旨の催告)」なら期間経過で取消し擬制、「保佐人」なら追認擬制です。
黙秘は単独では詐術にならず、他の言動と相まって誤信させた場合に詐術となる点も頻出です。