A所有の甲土地について、Bが所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。
ア AがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。
イ Bの取得時効が完成した後に、AがDに対して甲土地を売却しDが所有権移転登記を備え、Bが、Dの登記の日から所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をDに対抗することができる。
ウ Bの取得時効完成後、Bへの所有権移転登記がなされないままEがAを債務者として甲土地にAから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、Bがその後引き続き所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Eの抵当権は消滅する。
正答3
解説
正解は3です。
取得時効と登記(対抗関係)に関する判例の理解を問う個数問題です。
時効完成前の第三者には登記なしで対抗でき、時効完成後の第三者とは対抗関係になる、というのが判例の基本です。
【記述別解説】
ア:○ 時効完成前に所有権を取得したCは、時効取得者Bから見て時効の当事者と同様に扱われます。
したがって、Bは登記がなくてもCに時効取得を対抗できます(最判昭和41年11月22日)。
イ:○ 時効完成後の第三者Dが登記を備えると、Bは原則としてDに対抗できません。
しかし、Dの登記の日から改めて時効取得に必要な期間占有を続けた場合、Bは登記なしで再度の時効取得をDに対抗できます(最判昭和36年7月20日)。
ウ:○ 時効完成後に抵当権設定登記がされても、Bがその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続すれば、特段の事情がない限り再度の時効取得が認められます。
その結果、Bは所有権を取得し、Eの抵当権は消滅します(最判平成24年3月16日)。
ア・イ・ウの三つすべてが正しいので、正解は3です。
【ポイント】
「完成前の第三者には登記不要、完成後の第三者とは登記の先後で決まる」が基本です。
完成後の第三者が登記した時点から再び時効期間が経過すれば、時効取得者は登記なしで対抗できます。