AがBから賃借する甲建物に、運送会社Cに雇用されているDが居眠り運転するトラックが突っ込んで甲建物の一部が損壊した場合(以下「本件事故」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。
なお、DはCの業務として運転をしていたものとする。
(ア) AはBに対し、甲建物の滅失した部分の割合に応じ、賃料の減額を請求することができる。
(イ) Aは、甲建物の残りの部分だけでは賃借した目的を達することができない場合、Bとの賃貸借契約を解除することができる。
(ウ) Cは、使用者責任に基づき、Bに対して本件事故から生じた損害を賠償した場合、Dに対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。
正答3
解説
正解は3です。
賃借物の一部滅失による賃料減額・解除(民法611条)と、使用者責任の求償(民法715条3項)を問う問題です。
【記述別解説】
ア:○ 賃借物の一部が賃借人の過失によらずに滅失したときは、賃借人は滅失部分の割合に応じて賃料の減額を請求できます(改正前民法611条1項)。
本件事故は第三者Dの居眠り運転によるもので、Aに過失はありません。
したがって、AはBに賃料の減額を請求できます。
イ:○ 残りの部分だけでは賃借の目的を達することができないときは、賃借人は契約を解除できます(改正前民法611条2項)。
解除できるのは、減額請求と同様に賃借人に過失がない場合です。
ウ:○ 使用者責任に基づいて賠償した使用者は、被用者に求償できます(民法715条3項)。
ただし判例は、損害の公平な分担の見地から、信義則上相当と認められる限度に制限されるとしています(最判昭51.7.8)。
以上より、正しい記述はア・イ・ウの三つで、正解は3です。
【ポイント】
現行法では、一部滅失などで使用収益できなくなった部分の賃料は、請求を待たずに当然に減額されます(611条1項)。
求償を信義則で制限する判例は、業務中の交通事故の問題で繰り返し出題されています。