60 歳の男性。
Alzheimer 型認知症。
若いころから日曜大工が趣味で、本棚や花壇などを作っていた。
1 年前から食事をしたことを忘れるようになった。
最近、置き忘れた財布を 「盗まれた」 などと言い、家庭内でのトラブルが多くなり精神科を受診して入院となった。
作業療法導入時、 「ここは学校ですか。私は仕事がありますので帰ります」 と言い、作業療法室内を歩き回り、他の患者に対する怒声や暴言が観察された。
この時期の作業療法士の対応で優先すべきなのはどれか。
正答3
解説
正解は3です。
本例は物忘れと物盗られ妄想を伴う Alzheimer 型認知症です。
作業療法の導入時に、場所の見当識障害、帰宅欲求、徘徊、暴言がみられ、新しい環境に混乱している状態です。
まずは安心して過ごせるようにすることが優先されます。
【選択肢別解説】
1:× 厳しく叱っても、記憶障害のある本人は理由を理解できず、不安と興奮が強まります。
認知症の行動・心理症状(BPSD)を悪化させる対応です。
2:× 職業リハビリテーションは、就労を目指せる状態の人に行う支援です。
見当識が保たれず混乱している本例では対象になりません。
3:○ 新しい場所への不安が、徘徊や暴言の背景にあると考えられます。
なじみの人や物、穏やかな雰囲気を用意し、作業療法の場に慣れることを支援します。
導入時に最も優先すべき対応です。
4:× 木工は本人の趣味でしたが、落ち着かない状態で道具を使う作業を導入すると、けがや失敗につながります。
場に慣れ、落ち着いてから取り入れる活動です。
5:× 記憶力の改善を目的とした訓練は、うまくできない体験を重ねさせ、不安を強めることがあります。
この時期に優先する活動ではありません。
【ポイント】
認知症の作業療法の導入期は、安心できる環境とその場になじむことを最優先します。
趣味の活動は、本人が落ち着いてから能力に合わせて取り入れましょう。