60歳の男性。
右利き。
脳梗塞を発症し、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。
食事時に右手でスプーンの柄を握りこんでしまい、うまくスプーン操作ができず、介助が必要になることが多いが、少しずつ食事動作が円滑にできる場面が増えてきている。
頭部 MRI(別冊No. 3)を別に示す。
この食事動作の病態として考えられるのはどれか。
正答1
解説
正解は1です。
頭部MRI(FLAIR像)では、左頭頂葉の後外側(下頭頂小葉付近)の皮質から皮質下に高信号域があります。
左頭頂葉の病変では、道具の使用障害である観念失行が生じます。
症状が場面によって変動し、少しずつ改善している点も失行に合います。
【選択肢別解説】
1:○ 観念失行は、使い慣れた道具の使い方や一連の動作の順序がわからなくなる障害です。
スプーンの柄を握りこんでしまい適切に操作できないことは、道具の使用障害として説明できます。
2:× 視覚性失認は見た物が何かわからない障害で、主に両側後頭側頭葉の病変で生じます。
本例は病変部位が合わず、スプーンの操作そのものに問題がある点でも合いません。
3:× 運動維持困難は閉眼や挺舌などの動作を保てない障害で、主に右半球病変で生じます。
道具の操作の誤りとは異なる症状です。
4:× MRIの病変は左頭頂葉の後方で、中心前回や内包など運動路を含んでいません。
運動麻痺であれば、食事動作が場面によって円滑にできることも説明できません。
5:× 深部覚障害は中心後回や視床の病変で生じやすく、本例の病変部位とは異なります。
深部覚障害だけでは、柄を握りこむという道具の使用の誤りは説明できません。
【ポイント】
観念失行と観念運動失行は、どちらも左頭頂葉(優位半球)の病変で生じやすい失行です。
観念失行は「実際の道具使用の障害」、観念運動失行は「指示によるジェスチャーや模倣の障害」と区別します。