次の記述のうち、判例によれば、正しいものの組合せはどれか。
ア甲マンションにおいて、これまでにペットの飼育に関する規約がなかった場合に、盲導犬等を除いて犬や猫などのペットの飼育を禁止する旨の規約を設定することは、その飼育による実害の発生又はその発生の蓋然性がないときでも許される。
イ乙マンションの区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷等することによって管理組合の業務の遂行や運営に支障を生じさせた場合には、区分所有法に定める「区分所有者の共同の利益に反する行為」に該当する余地がある。
ウ丙マンションの建物内の倉庫部分について、構造上及び利用上の独立性があっても、当該倉庫部分の一部に他の区分所有者のための共用設備が設置されている場合には、当該倉庫部分が専有部分となる余地はない。
エ丁建物について、区分所有建物である旨の登記が可能であるにもかかわらず、区分所有建物ではない1棟の建物としての登記がなされた場合には、丁建物は「区分所有建物ではない建物」とみなされるので、その後、これにつき区分所有建物である旨の登記をすることはできない。
正答1
解説
正解は1(ア・イ)。
ペット飼育禁止規約、役員への誹謗中傷と共同の利益に反する行為、倉庫部分の専有部分性、区分所有建物の登記に関する判例を問う組合せ問題です。
【選択肢別解説】
ア:○ マンションでの動物飼育は、糞尿や鳴き声など他の区分所有者に有形無形の影響を及ぼすおそれがあるので、実害の発生やその蓋然性を要件とせずに一律に飼育を禁止する規約を設定することも許されるとした裁判例があります(東京高判平成6年8月4日)。
イ:○ 区分所有者が、業務執行に当たっている管理組合の役員らを誹謗中傷する内容の文書を配布するなどして管理組合の業務の遂行や運営に支障を生じさせた場合、区分所有法6条1項の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たる余地があるとするのが判例です(最判平成24年1月17日)。
ウ:× 判例は、構造上及び利用上の独立性がある建物部分に他の区分所有者の共用設備が設置されていても、その設備が当該部分の小部分を占めるにとどまり、その部分の排他的使用に格別の制限や障害を生じないときは、専有部分となり得るとしています(最判昭和56年6月18日)。
「専有部分となる余地はない」は誤りです。
エ:× 区分所有建物の要件を備えた建物が一棟の建物として登記されていても、所有者の意思によって、その後に区分建物の登記(建物の区分の登記)をすることは可能です。
登記の形式によって「区分所有建物ではない建物とみなされ、以後区分の登記ができない」ということはありません。
よって正しいものはア・イです。
【ポイント】
専有部分となるかは「構造上・利用上の独立性」と「共用設備による排他的使用の妨げの有無」で判断されます。
役員への誹謗中傷も共同の利益に反する行為になり得る、という判例は近年の頻出論点です。