〔事例〕
Cさん(59歳、男性)は、妻(55歳)と二人暮らしであり、専業農家である。
Cさんはおとなしい性格であったが、最近怒りやすくなったと妻は感じていた。
Cさんは毎日同じ時間に同じコースを散歩している。
ある日、散歩コースの途中にあり、昔からよく行く八百屋から、「Cさんが代金を支払わずに商品を持っていった。今回で2回目になる。お金を支払いにきてもらえないか」と妻に連絡があった。
妻がCさんに確認したところ、悪いことをした認識がなかった。
心配になった妻がCさんと病院に行くと、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)と診断を受けた。
妻は今後同じようなことが起きないように、Cさんの行動を常に見守り、外出を制限したが、疲労がたまり、今後の生活に不安を感じた。
そこで、地域包括支援センターに相談し、要介護認定の申請を行い、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。
Cさんが八百屋でとった行動から考えられる状態として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答1
解説
正解は1です。
前頭側頭型認知症の症状を、事例の行動から判断する問題です。
Cさんは昔からよく行く八百屋で「代金を支払わずに商品を持っていった」うえ、「悪いことをした認識がなかった」とされています。
【選択肢別解説】
1:○ 脱抑制は、社会のルールや周囲への配慮を抑える働きが失われ、思ったままに行動してしまう状態です。
悪いことをした認識がないまま商品を持ち去るのは、前頭側頭型認知症に特徴的な脱抑制による行動です。
2:× 記憶障害は、新しいことを覚えられない、出来事を忘れるといった症状です。
Cさんは毎日同じ道を散歩できており、行動の説明として記憶障害は適切ではありません。
3:× 感情失禁は、ささいなことで泣いたり笑ったりと、感情をコントロールできない状態です。
脳血管性認知症でよくみられ、事例の行動とは異なります。
4:× 見当識障害は、時間・場所・人が分からなくなる症状です。
Cさんは昔からよく行く八百屋へ迷わず行けており、見当識障害を示す記述はありません。
5:× 遂行機能障害は、計画を立てて順序よく物事を進めることが難しくなる症状です。
代金を払わずに持ち去る行動の説明にはなりません。
【ポイント】
前頭側頭型認知症では、脱抑制のほか、同じ行動を繰り返す常同行動、性格の変化などがみられます。
毎日同じ時間に同じコースを散歩するのは、常同行動の例です。