A さん(45 歳、男性)は高校の国語教諭。
9 か月前の定期健康診断では特に異常はなかった。
1 か月ほど前から咳嗽が出現し、市販の咳止め薬で様子をみていた。
昨日から咳嗽が増強し、発熱もみられたため近医を受診したところ、胸部エックス線検査で異常陰影が認められ、呼吸器外来のある病院を紹介された。
喀痰塗抹抗酸菌検査陽性で結核菌 PCR 検査陽性が判明したため、感染性の肺結核と診断され、直ちに入院となった。
診断した医師から保健所へ発生届が提出された。
A さんの濃厚接触者に対する接触者健康診断を計画した。
他者への感染の可能性がある期間の始期はどれか。
正答3
解説
正解は3です。
Aさんは喀痰塗抹検査が陽性で、周囲に感染させる力が強い状態で診断されました。
接触者健診では、Aさんが菌を出し始めた時期(感染性期間の始期)を推定し、それ以降に接触した人を対象にします。
「結核の接触者健康診断の手引き(改訂第6版)」では、喀痰塗抹陽性の患者の始期を、原則として結核診断日の3か月前としています。
【選択肢別解説】
1:× 前回の定期健康診断の翌日を始期とするのは誤りです。
9か月前の健診では異常がなく、その日から菌を出していた根拠はありません。
始期を9か月前まで広げる理由はなく、対象者の範囲が広がりすぎます。
2:× 前回の定期健康診断の3か月後を始期とするのも誤りです。
健診日を起点とする決まりはなく、Aさんが菌を出し始めた時期を推定する根拠になりません。
3:○ 結核診断日の3か月前が、感染性期間の始期として適切です。
喀痰塗抹陽性の患者は、本人が症状に気づく前や、軽い咳の時期から菌を出していることが多いです。
症状の出始めは本人の記憶に頼るため不確かであり、手引きでは診断日から3か月さかのぼることを基本としています。
Aさんの咳は「1か月ほど前から」ですが、喀痰塗抹陽性なので、咳の出現時期ではなく診断日の3か月前を始期とします。
4:× 発熱出現の2週前を始期とするのは誤りです。
発熱は診断の前日に出た症状であり、それより前の1か月以上続く咳の期間すら含まれません。
5:× 発熱が出現した日を始期とするのも誤りです。
咳が出ていた時期に接触した人が対象から漏れ、感染者を見逃すおそれがあります。
【ポイント】
喀痰塗抹陽性(または空洞あり)の患者の感染性期間の始期は、原則として結核診断日の3か月前です。
症状の出現から診断まで3か月以上かかっている場合は、症状が出た時点までさかのぼります。
喀痰塗抹陰性で空洞もない患者では、最初に症状が出た時点を始期とするのが基本です。