A さん(60 歳、男性、自営業)は 1 人暮らし。
つまずいたり転んだりすることが多くなり、精密検査のため入院したところ、筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉と確定診断された。
近隣に住む弟(57 歳)と一緒に運送業を営んでいたが、運転ができなくなり仕事を辞めた。
弟が保健所に医療費助成申請の手続きのために来所し、保健師が面接したところ「兄は自宅で度々転んでいます。この先どのような生活になるのか不安です」と話した。
保健師は今後の支援体制を検討していくために、入院している医療機関で A さんと面接し「最期まで住み慣れた自宅で誰にも気を遣わず生活したい」という意向を確認し、主治医とも病状について共有した。
A さんが誤嚥性肺炎で入院したことを機に今後の治療方針について検討を行った。
A さんは人工呼吸器の装着と胃瘻造設をしないという意思表示をした。
数日後、A さんの弟が保健所に来所した。
「兄は人工呼吸器や胃瘻についてまだ迷っているようです。兄には長生きをしてほしいので病状が進行したら人工呼吸器をつけてほしい」と保健師に相談した。
このときに保健師が弟へ伝える内容で適切なのはどれか。
正答1
解説
正解は1です。
人工呼吸器の装着と胃瘻造設をしないと意思表示したALS患者について、装着を望む弟から相談を受けたときの対応を問う問題です。
A さんは誤嚥性肺炎で入院したことを機に、人工呼吸器と胃瘻を選ばないと表明しました。
しかし弟は、A さんはまだ迷っているようだと感じており、長生きしてほしいと願っています。
ALSは病状の進行とともに気持ちが揺れ動きやすく、意思決定は一度で終わるものではありません。
【選択肢別解説】
1:○ 「皆で継続して話し合っていきましょう」と伝えることが適切です。
本人の意思は変わることがあるため、本人を中心に、家族や医療・介護チームが繰り返し話し合うことが大切です。
こうした過程は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼ばれます。
2:× A さんの死去後の生活を考えるよう促すことは、A さんが生きている今の意思決定の相談に応えるものではありません。
長生きを願う弟の気持ちを傷つけるおそれもあります。
3:× 初めに表明した意思だけを尊重するよう伝えることは適切ではありません。
A さんはまだ迷っている可能性があり、意思は病状や状況によって変わりうるからです。
4:× 人工呼吸器を装着するとずっと付き添いが必要だと伝えることは、装着しない方向へ弟を誘導することになります。
また、訪問看護や介護サービスの利用など、さまざまな療養の形があります。
【ポイント】
意思決定支援では、本人の意思を中心にしつつ、家族の思いも受け止め、繰り返し話し合う過程を大切にします。
ALSでは、病状の段階ごとに治療の選択について話し合いを重ねます。