図は結晶多形をもつ薬物Aについて15〜35℃におけるリン酸緩衝液中の溶解度(S)の対数値を絶対温度(T)の逆数に対してプロットしたものである。
この図に関する記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。
ただし、Aの溶解熱は測定温度範囲において一定とする。
(図:横軸1/T×10^3(K^-1)(2.6〜3.6)、縦軸log S(0.0〜1.0超)のプロット。1/T×10^3が約3.25〜3.5の実測域では、●(II形)を結ぶ実線が上、○(I形)を結ぶ実線が下にあり、いずれも右下がり。そこから1/Tの小さい(高温)側へは、II形が長い破線、I形が短い点線で外挿されている。I形の直線の方が傾きが急で、両直線は1/T×10^3=2.8付近(縦の点線T_rの位置)で交差する。T_rより高温側(1/Tが小さい側)ではI形(点線)がII形(破線)より上方=高い溶解度に、T_rより低温側(1/Tが大きい側)ではII形(破線)がI形(点線)より上方になる。)
正解を2つ選んでください。
正答2・5
解説
正解は2と5。
Trは1/T×10^3=2.8すなわちT=1000/2.8≈357 K≈84℃に相当し、これがII形からI形への転移温度(両結晶形の溶解度が一致する熱力学的転移点)である。
図中の関係から、Trより高温側(1/Tがより小さい側)ではII形とI形の溶解度の大小関係が逆転し、I形の方が高い溶解度を示すと予測される。
2直線の傾きの差から転移熱(ΔHtrs、I形とII形の溶解熱の差に相当)を推定することは可能であり「知ることができない」という記述は誤り。
Trは結晶の分解開始温度ではなく多形間の転移温度である。
両直線とも右下がり、すなわちlog Sが1/Tの増加とともに減少しており、van't Hoffの式 log S=−ΔHsol/(2.303R)×(1/T)+定数 より、溶解熱ΔHsolは勾配に−2.303Rを乗じた値、すなわち勾配とは逆符号であるから、勾配が負であることは溶解熱が正(吸熱)であることを意味し、負の値ではない。