図は、ある化合物の1H-NMRスペクトル(400 MHz、CDCl3、基準物質はテトラメチルシラン)を表したものである。
この化合物の構造式として正しいのはどれか。
1つ選べ。
なお、拡大図A、B、Cの拡大率はそれぞれ異なる。
また、ウのシグナルは重水を添加することにより消失する。
(下図:1H-NMRスペクトル全体図と拡大図A(アの拡大:1.2〜1.3 ppm付近の二重線)、B(イの拡大:3.1〜3.2 ppm付近の七重線様)、C(オ、エの拡大:6.9〜7.1 ppm付近の複数シグナル)、及び選択肢1〜5の構造式。)
正答1
解説
正解は1。
プロポフォール(2,6-ジイソプロピルフェノール)は分子内対称性が高く、2つのイソプロピル基のメチル(計12H)が1本の二重線(ア)、2つのメチンH(計2H)が七重線(イ、3.1〜3.2 ppm)として現れる。
フェノール性OHは重水交換で消失する1Hのシグナル(ウ)に対応する。
芳香環はOHのオルト位2ヶ所がイソプロピル基で置換された形であり、残る3個のH(3,4,5位)は互いにオルト位の関係にあるため、対称な2つのHが二重線(2H)、パラ位のHが三重線(1H)としてオ・エの位置(6.9〜7.1 ppm)に現れ、この見え方はプロポフォールの構造と一致する。
選択肢2の3,5-ジイソプロピルフェノールでは残る3個の芳香環H(2,4,6位)が互いにメタ位の関係にあるため、オルトカップリングに基づく二重線と三重線の組は生じず、この芳香環部のパターンと合わない。
選択肢3・4の安息香酸類はカルボキシ基のプロトンが10 ppmを超える低磁場に現れるうえ、電子求引性のCOOHにより芳香環Hも6.9〜7.1 ppmより低磁場へ移動するため合わず、とくに選択肢4の2,5-ジイソプロピル体は2つのイソプロピル基が非等価であるためメチルの二重線とメチンの七重線がそれぞれ2組現れるはずで、ア・イが各1本であることと矛盾する。
選択肢5の1,3-ビス(イソプロポキシ)ベンゼンには重水添加で消失する活性水素がなく、またイソプロピル基のメチンHは酸素に結合しているため4 ppmを超える低磁場(約4.5 ppm)に現れるので、ウのシグナルの挙動ともイの3.1〜3.2 ppmという位置とも合わない。