図は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)によってアセチルコリンが加水分解される際の初期段階の反応機構と2種類のAChE阻害剤A、Bの構造を示したものである。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。
2つ選べ。
(図:AChE活性部位のGlu-His-Ser-Trp残基とアセチルコリンの反応機構。反応前は、Glu側鎖のカルボキシラートがHis(イミダゾリル基)とHで水素結合し、Hisがさらに Ser の O-H と水素結合。Ser近傍にアセチルコリンのアセチル基(H3C-C(=O)-O-CH2CH2-N+(CH3)3)がTrpにより配向。反応後は、SerのOにアセチル基が転移してSer-O-CO-CH3となり、His-N-Hが遊離のコリン(HO-CH2CH2-N+(CH3)3)のOと水素結合。
AChE阻害剤A:H3C-N(CH3)-CO-O-C6H4-N+(CH3)3 Br-(メタ位に置換したカルバメート、臭化物イオン塩)
AChE阻害剤B:(H3C)2CH-O-P(=O)(CH3)-F(イソプロピル基を持つ有機リン酸フッ化物、サリン様構造))
正解を2つ選んでください。
正答1・5
解説
正解は1と5。
Glu側鎖のカルボキシラートがHisのイミダゾリル基と水素結合することでHisの塩基性(求核性)が高まり、さらにHisがSerのヒドロキシ基と水素結合することでSerのヒドロキシ基の求核性(選択肢2の記述は求電子性ではなく求核性が正しい)が高まる触媒三残基(charge relay system)の機構である。
アセチルコリンの四級アンモニウムはTrpとカチオン-π相互作用で結合しておりイオン結合ではない。
カルバメート型阻害剤Aはセリンをカルバミル化するが、この結合は徐々に加水分解されうる可逆的(擬不可逆的)な反応でありアミド化して不可逆的に失活させるわけではない。
有機リン化合物である阻害剤B(サリン様構造)はセリンのヒドロキシ基をリン酸化し、この結合は極めて安定でほぼ不可逆的にAChEを阻害する。