75 歳の男性。
一人暮らし。
歩行時のふらつきを主訴に来院した。
以前から食事が不規則で、 5 日前から食事を摂らなくなった。
上肢に明らかな異常はないが、下肢筋力は MMT4レベルで、下肢遠位優位のしびれ感がある。
膝蓋腱反射は亢進しているが、アキレス腱反射は低下し、Babinski 反射は陽性だった。
眼振は認めない。
血清ビタミン B12 の低下を認めた。
重心動揺検査結果(別冊No. 3)を別に示す。
可能性が高い疾患はどれか。
正答5
解説
正解は5です。
ビタミンB12低下に加え、Babinski反射陽性と膝蓋腱反射亢進(側索の錐体路障害)があります。
さらに下肢遠位のしびれと閉眼時のふらつき増大(後索の深部感覚障害)を伴います。
重心動揺検査の図は見出しがどちらも「開眼」と表示されています。
2つを比べると、右の図では左の図より動揺範囲が左右・前後とも大きく広がっています。
後索障害では、視覚で代償できない閉眼時に動揺が増えるRomberg徴候が陽性になります。
【選択肢別解説】
1:× 皮膚筋炎は近位筋の筋力低下と特徴的な皮疹を示す炎症性筋疾患です。
錐体路徴候や深部感覚障害は起こりません。
2:× Shy-Drager症候群は起立性低血圧などの自律神経障害が目立つ多系統萎縮症です。
ビタミンB12欠乏とは関係がなく、閉眼で悪化する感覚性失調も特徴ではありません。
3:× 筋萎縮性側索硬化症は上位・下位運動ニューロンが障害される疾患です。
感覚障害は原則として起こらず、しびれや閉眼での悪化は説明できません。
4:× ポストポリオ症候群は、ポリオ罹患から数十年後に新たな筋力低下や疲労が出る状態です。
錐体路徴候や感覚障害は伴いません。
5:○ 亜急性連合性脊髄変性症はビタミンB12欠乏で脊髄の後索と側索が障害されます。
後索障害でRomberg徴候、側索障害でBabinski反射陽性が出ることと一致します。
【ポイント】
アキレス腱反射の低下は、ビタミンB12欠乏による末梢神経障害の合併で説明できます。
「B12低下+後索障害+錐体路徴候」の組み合わせで亜急性連合性脊髄変性症を想起しましょう。