〔事例〕
Aさん(85歳、女性、要介護1)は、B住居型有料老人ホームで暮らしている。
子どもはなく、親族もいない。
Aさんは現在、外部の事業所から訪問介護サービスを週2回利用している。
Aさんは駐車場を経営していて、毎月その収入がある。
最近、C訪問介護員(ホームヘルパー)は、Aさんの居室内の冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん入っていることが多く、気になっていた。
ある日、C訪問介護員(ホームヘルパー)がAさんに尋ねると、「近所のスーパーに買い物に行くのが楽しみだが、冷蔵庫の中に何があるのか忘れてしまい、同じものばかり買ってしまう」と答えた。
また、「今は、毎月振り込まれる駐車場収入の管理ができているが、今後管理できなくなることが不安だ」と話した。
その後、Aさんは、初期のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)の診断を受けた。
D介護付き有料老人ホームに転居してから3年が経過した。
Aさんの認知症(dementia)の症状は、さらに進行してきた。
D介護付き有料老人ホームでは、施設の方針として、新たにパーソン・センタード・ケアを取り入れることになった。
次の記述のうち、E介護福祉職が介護計画を見直すときの方向性として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答3
解説
正解は3です。
パーソン・センタード・ケアの考え方に沿った介護計画の方向性を問う問題です。
パーソン・センタード・ケアは、イギリスのトム・キットウッドが提唱した、認知症の人を一人の「人」として尊重し、その人の立場に立って行うケアです。
【選択肢別解説】
1:× 認知症の人の共通点に着目したマニュアルは、一人ひとりの違いを見落とすおそれがあります。
パーソン・センタード・ケアでは、その人の個別性に着目します。
2:× 認知症を治療することは医療の役割です。
介護計画の方向性は、病気ではなく、その人の生活と気持ちに焦点を当てることです。
3:○ パーソン・センタード・ケアは、生活歴や価値観、好みなどを大切にし、その人らしさを支えるケアです。
介護計画もAさんのその人らしさを支える方向で見直します。
4:× 特別な存在として保護すると、本人の役割や自己決定の機会を奪うことになります。
パーソン・センタード・ケアでは、社会の一員として対等に尊重します。
5:× 行動・心理症状は、本人の満たされないニーズや不安の表れと考えます。
症状をなくすことを目的にするのではなく、その背景にある本人の思いを理解することを重視します。
【ポイント】
パーソン・センタード・ケアは「病気ではなく人を中心に」考えるケアです。
認知症の人の状態は、脳の障害だけでなく、健康状態、生活歴、性格、周囲との関係の影響も受けると考えます。