〔事例〕
Fさん(20歳、男性)は、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)と重度の知的障害があり、自宅で母親(50歳)、姉(25歳)と3人で暮らしている。
Fさんは生活介護事業所を利用している。
事業所では比較的落ち着いているが、自宅に帰ってくると母親に対してかみつきや頭突きをすることがあった。
また、自分で頭をたたくなどの自傷行為もたびたび見られる。
仕事をしている母親に代わり、小さい頃から食事や排泄の介護をしている姉は、これまでFさんの行動を止めることができていたが、最近ではからだが大きくなり力も強くなって、母親と協力しても止めることが難しくなっていた。
家族で今後のことを考えた結果、Fさんは障害者支援施設に入所することになった。
Fさんが入所してからも月1、2回は、姉が施設を訪ね、Fさんの世話をしている。
ある日、担当の介護福祉職が姉に声をかけると、「小学生の頃から、学校が終わると友だちと遊ばずにまっすぐ家に帰り、母親に代わって、弟の世話をしてきた。今は、弟を見捨てたようで、申し訳ない」などと話す。
介護福祉職の姉への対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答3
解説
正解は3です。
長年、家族の介護を担ってきた姉への対応を問う事例問題です。
姉は「小学生の頃から」母親に代わってFさんの世話をしてきたと話し、今は「弟を見捨てたようで、申し訳ない」と感じています。
【選択肢別解説】
1:× これからも世話をしっかりするよう求めると、姉にさらに責任を負わせることになります。
申し訳なさを感じている姉の気持ちを受け止めていません。
2:× 施設での落ち着いた様子を伝えるだけでは、姉の話を受け止めたことになりません。
自傷他害がないように見えると言うと、家族の苦労を否定するようにも受け取られます。
3:○ 姉が小さい頃から母親の代わりに弟の世話をしてきたことを受け止め、言葉にして返しています。
これまでの経験と思いを受け止めることで、姉は自分の気持ちを理解してもらえたと感じられます。
4:× 訪問回数を減らすよう勧めるのは、姉の気持ちを聞く前の一方的な提案です。
弟を気にかける姉の思いを受け止めていません。
5:× 姉は施設入所を後悔しているとは言っていません。
姉の言葉を勝手に解釈しており、在宅ケアの再検討を持ち出すと、姉をさらに追い詰めます。
【ポイント】
子どもの頃から家族の介護を担ってきた人(ヤングケアラーであった人)は、介護から離れたあとも罪悪感を抱えることがあります。
まずは、これまでの経験と思いを受け止め、ねぎらうことが大切です。