〔事例〕
Aさん(80歳、女性)は、自宅で一人暮らしをしている。
同じ県内に住む娘が、月に一度Aさんの自宅を訪れている。
最近、Aさんの物忘れが多くなってきたため、不安になった娘が、Aさんと一緒に病院を受診したところ、医師から、脳の記憶をつかさどる部分が顕著に萎縮したアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)であると診断された。
Aさんはこのまま自宅で暮らすことを希望し、介護保険の訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用しながら一人暮らしを継続することになった。
ある日、娘からサービス提供責任者に、今年はAさんが一人で雪かきができるか不安であると相談があった。
そこで、サービス提供責任者が、Aさんと一緒に地区の民生委員に相談したところ、近所の人たちが雪かきをしてくれることになった。
図は脳を模式的に示したものである。
Aさんの脳に萎縮が顕著にみられる部位として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答4
解説
正解は4です。
図は、脳を横から見た模式図です。
図の左側が前(顔の側)で、大脳の一部を切り取って内部の構造が見えるように描かれています。
Aは大脳の前方、Bは大脳の上部、Cは大脳の後方を指しています。
Dは、側頭葉の内側にある、弓なりに曲がった細長い構造を指しており、これが海馬です。
Eは、大脳の後ろ下にある、細かい横じま模様の小脳を指しています。
Aさんは「脳の記憶をつかさどる部分が顕著に萎縮した」アルツハイマー型認知症と診断されています。
記憶をつかさどる部位は海馬なので、萎縮が顕著な部位はDです。
【選択肢別解説】
1:× Aは前頭葉です。
思考や判断、意欲、感情のコントロール、運動の指令などを担います。
前頭葉の萎縮が目立つのは、前頭側頭型認知症です。
2:× Bは頭頂葉です。
皮膚の感覚や、空間の位置関係をとらえる働きなどを担います。
記憶をつかさどる部分ではありません。
3:× Cは後頭葉です。
視覚の情報を処理する視覚野があります。
記憶をつかさどる部分ではありません。
4:○ Dは側頭葉の内側にある海馬です。
海馬は新しい出来事を記憶として定着させる働きをもち、アルツハイマー型認知症では早期から顕著に萎縮します。
5:× Eは小脳です。
体のバランスを保ち、動きをなめらかに調整する働きを担います。
記憶をつかさどる部分ではありません。
【ポイント】
アルツハイマー型認知症は「海馬の萎縮」で、新しいことを覚えられない記憶障害から始まることが多い病気です。
レビー小体型認知症は後頭葉の血流低下、前頭側頭型認知症は前頭葉と側頭葉の萎縮が特徴です。