70 歳の男性。
右利き。
右脳出血による左片麻痺。
発症後2 週。
運動麻痺は左上下肢ともBrunnstrom 法ステージⅢ、感覚障害は中等度。
座位では、右上下肢で座面や床面を押し、図のような姿勢となる。
転倒の危険があり、理学療法士が正中位に修正を試みるが抵抗する。
平行棒内立位でも同様に右上下肢で押すため身体は左に傾斜し、立位保持要介助である。
移乗動作時に右上下肢でベッド柵や床面を強く押して麻痺側に傾くため、自立が難しい。
移乗動作改善を目的とした理学療法で最も適切なのはどれか。
正答5
解説
正解は5です。
図と経過から、本症例はpusher現象を示しています。
非麻痺側(右)の上下肢で押して麻痺側に傾くため、押す動作を引き出さずに非麻痺側へ重心を移す練習が有効です。
【選択肢別解説】
1:× pusher現象の治療では、視覚による垂直の手がかりを利用して姿勢を修正します。
閉眼は有効な視覚情報を奪い、転倒の危険も高めるため不適切です。
2:× 右上下肢は非麻痺側であり、関節可動域の制限が問題ではありません。
押す動作の原因は姿勢定位の障害であり、可動域運動では改善しません。
3:× 右大腿四頭筋の筋力低下は本症例の問題ではありません。
非麻痺側の筋力を強化しても、押す動作や麻痺側への傾きは改善しません。
4:× 手すりを用いると、非麻痺側の上肢で手すりを押したり引いたりしやすくなります。
押す動作を強め、麻痺側への傾きを助長するおそれがあります。
5:○ 非麻痺側へのリーチ動作では、上肢が支持から離れるため押す動作が起こりにくくなります。
目標物へ手を伸ばす中で、能動的に非麻痺側へ重心を移す経験を積めます。
正中の再学習につながり、移乗動作の改善に役立ちます。
【ポイント】
pusher現象には、押す手を支持から離し、非麻痺側へ能動的に重心を移す課題が有効です。
手すりや杖は押す動作を引き出しやすいため、使い方に注意が必要です。