47 歳の女性。
抗リン脂質抗体症候群の既往がある。
右変形性膝関節症に対して高位脛骨骨切り術を3日前に受けた。
右大腿部から足部まで発赤を伴う腫脹を認め、Homans 徴候陽性である。
術後に実施した主な血液検査の結果を表に示す。
術後の合併症として考えられるのはどれか。
正答5
解説
正解は5です。
血栓ができやすい抗リン脂質抗体症候群の既往がある患者に、下肢の骨切り術後、片側下肢の腫脹とHomans徴候陽性がみられた症例です。
表ではDダイマーが38μg/mL(基準値0.0〜1.0μg/mL)と著明に高く、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は基準値内です。
【選択肢別解説】
1:× 蜂窩織炎は皮膚・皮下組織の細菌感染で、発赤・熱感・疼痛を伴います。
しかしHomans徴候陽性やDダイマーの著明な上昇は説明できず、白血球数も7.5×10³/μLと基準値内です。
2:× リンパ浮腫はリンパ節郭清後などに緩徐に進む浮腫で、通常は発赤を伴いません。
術後3日で急に発赤を伴って腫れる経過とは合いません。
3:× 化膿性関節炎は関節内の細菌感染で、関節局所の腫脹・熱感と強い痛みが主体です。
大腿から足部まで下肢全体が腫れる所見や、Homans徴候陽性とは合いません。
4:× うっ血性心不全では両下肢に浮腫が出やすく、BNPが上昇します。
本例のBNPは17.5pg/mLで基準値(18.4pg/mL以下)内であり、片側の腫脹とも合いません。
5:○ 深部静脈血栓症(DVT)では、片側下肢の腫脹・発赤・疼痛がみられ、Homans徴候(膝伸展位で足関節を背屈すると腓腹部痛が出る)が陽性になります。
Dダイマーは血栓が分解されるときに生じる物質で、著明な高値は血栓の存在を強く示します。
抗リン脂質抗体症候群と下肢手術後という危険因子も重なっています。
【ポイント】
DVTの誘因はVirchowの3徴(血流のうっ滞、血管内皮の障害、凝固能の亢進)で整理します。
CRP 2.25mg/dLの軽度上昇は術後の炎症反応でも説明できます。
術後の片側下肢腫脹をみたら、肺血栓塞栓症を防ぐため運動療法を控えて医師に報告します。