〔事例〕
Dさん(70歳、男性)は、19歳のときに統合失調症(schizophrenia)を発症し、入退院を繰り返しながら両親と一緒に生活してきた。
両親が亡くなったことをきっかけとして不安に襲われ、妄想や幻聴の症状が強く現れるようになった。
そのため、兄に付き添われて精神科病院を受診し、医療保護入院となった。
現在は、入院から3年が経過し、陽性症状はほとんどなく、病棟で日中はレクリエーションに参加するなど落ち着いて生活している。
Dさんは施設への入所が決まり、うれしそうに退院の準備をするようになった。
ある夜、1人で荷物の整理をしていたときに転んでしまい、顔を強打して大きなあざができた。
後遺症はないことがわかったが、Dさんは自信をなくし、介護福祉職に、「これでは施設も自分を受け入れてくれないだろう」と言い、「施設入所がうれしくて早く準備がしたかった」と話した。
そばに寄り添い、Dさんの話を聴き終えた介護福祉職が、「施設入所がうれしくて、早く準備をしたかったのですね」と言うと、Dさんは、「退院を諦めていたけど、自分にも暮らせる場所があると思った」とやりたいことや夢を語り出した。
介護福祉職が行ったコミュニケーション技術として、最も適切なものを1つ選びなさい。
正答4
解説
正解は4です。
相手の話を受け止める応答技法の名称を問う問題です。
Dさんは「施設入所がうれしくて早く準備がしたかった」と話し、介護福祉職は「施設入所がうれしくて、早く準備をしたかったのですね」と応じました。
Dさんの言葉をほぼそのまま返している点が、判断の根拠です。
【選択肢別解説】
1:× あいづちは、「ええ」「そうですか」などの短い言葉で、話を聴いていることを示す技法です。
Dさんの言葉を返してはいません。
2:× 言い換えは、相手の話を別の言葉で表現し直す技法です。
介護福祉職は、Dさんの言葉を別の表現に変えてはいません。
3:× 要約は、話の内容をまとめて短く伝える技法です。
長い話全体を整理したのではなく、一つの発言をそのまま返しています。
4:○ 繰り返しが適切です。
相手の言葉をそのまま返すことで、話をしっかり聴いていることが伝わり、Dさんは安心してやりたいことや夢を語り出しています。
5:× 閉じられた質問は、「はい」「いいえ」などで答えられる質問です。
介護福祉職の応答は質問ではありません。
【ポイント】
繰り返しは、相手が自分の気持ちを確かめ、さらに話を広げるきっかけになります。
転倒で自信をなくしたDさんが前向きな気持ちを取り戻せたのは、思いを受け止めてもらえたと感じたからです。